でも、と、


「よく見たら全然違いますもんね」

「え?」

「私も最初どっちがどっちだが分からなかったんですけど、今はちゃんと見分けが付きます。お兄さんの方が、優しい顔をしてます」

「……」


そんなことを言われたのは初めてかもしれない。どちらかといえばいつも目立つのは紅の方で、印象に残るのも紅の方だから。
昔から容量が良すぎて、"紅じゃない方"と覚えてもらうことがほとんどだったから。


「(ヤバい、反応が遅れた……)」


紅と違って俺は完璧でいないといけないのに。


「って、私なんかに言われたって全然嬉しくないですよねていうか何偉そうに言ってるんだって感じですよねあぁあっ今の忘れてもらっていいですか忘れられませんよね今すぐここで自害して謝罪を……」

「っ、あ、いや、嬉しかったですよ」

「……ご、ごめんなさい」


ごめんなさいと言ってどんどん小さくなっていく彼女にプッと笑いが吹き出る。
歳下の女の子に気を遣わせるなんて格好良くないなぁ、俺。

宇佐美さんはネガティブが過ぎるけれど、そういうところ嫌いではないな。


「その女性が一目惚れするのも分かるかも。高野さん優しいから」

「そうですか」

「そうです……私にもいつも優しくしてくれて……ありがとう、ございます」


ボソボソと小さく呟かれた言葉にキュッと心臓を掴まれた気がした。

じゃあなんで、


「(いつも俺じゃないんだろう……)」