ポカンと口を開ける紅にどう反応したからいいか分からずにいると隣にいた小野さんが「頭で処理できてないんじゃないですか?」と険しい目つきになる。
すると紅はいつもよりも真剣な表情となり、こちらを見つめてきた。


「なんかおかしいと思ったんだよな。会ったこともねぇのにいきなり告白とか」

「え、」


意外に紅も突然の告白に不信感を覚えていたことが分かった。
何も考えてない馬鹿ではなかったということでひとまずは安心出来る。


「じゃあ何で返事OKしたんですか?」

「ん、あぁ……」

「あぁ……って何。早く言いなよ」

「いやぁ……ちょっと、なぁ……」


顔を赤くして告白の返事の理由をモゴモゴと濁す紅の姿が余程珍しかったのか、俺たち二人は彼から目が離せなくなった。
隣の小野さんの表情も「あの紅先輩が恥じらいでいる」と呆気に取られた感じだったし、彼の様子から見てただごとではないというのが伝わってくる。

結局自分から話そうとしない彼に痺れを切らしたのか、小野さんが「まさか」と、


「まさか紅先輩の方が一目惚れしちゃったんじゃ……」

「っ……は!?」


彼女の言葉に紅の顔がボンッと破裂する。


「んなわけねぇーだろ! 馬鹿かテメェは!」

「いやいや、その顔して隠せてると思える方が凄いですよ」

「っ……確かに? ちょっと可愛いかなぁって思っただけだし! ちょっとくらい付き合ってもいいだろうが!」

「全然駄目ですよ!? 向こうは紅先輩のことを蒼先輩だと思ってるんですから! 嘘ついてるってことですよ!?」


小野さんの言葉は正論だと思うし、たとえ紅があの人を好きでも本当のことを話して付き合うことはなかったことにするのが一番良いと思う。