ここで新しく、バイトのメンバーを一人紹介します。


「桐谷先輩、私ってそんなに女として魅力ないですか?」

「……」


黒髪の彼はカウンターにオムライスを置くと私の言葉を聞かなかったふりをしてまた厨房に奥に戻っていく。
私は急いで彼の腕を掴んで引き止めた。


「待って! 無視は酷くないですか? これでも私真剣に悩んでいるんですけど!」

「飯冷めるから早く持っていけよ」

「いや、私の質問は……」

「無い」

「簡潔にありがとうございます!」


ってそうじゃない! 今即答で「魅力が無い」って言われたんだ!
早く持ってけ、と繰り返し言う彼に頷くと丁寧にオムライスを客席に届ける。だけどここで諦めるわけにはいかない。女としての魅力の感じない理由を教えてもらわないと。

今話していたのは厨房スタッフの桐谷孝介先輩、20歳か19歳。誕生日知らないから分からないけど大学二回生という事は聞いていた。
ちなみに私が今まで見てきた中で一番綺麗なお顔をなさっている。背も高くて切れ目な瞳、形のいい唇。全てにおいてのバランスがいい。きっと昔からおモテになってきたのだろう。

まあ、私は店長一筋だけど。

桐谷先輩は無口でクールと言われている。確かに笑ったところなんて私がバイトを始めてまだ一度も見たことはない。是非拝んでみたいものだ。
無視されることに関して慣れ始めてはきているけど、やっぱり桐谷先輩の意見も聞きたいな。