しかしホームに辿り着いた時に一呼吸を置くと振り向き、そして駆け上がった階段を降りていく。


「大丈夫ですか?」


そう声を掛けて女性が落としたノートや水筒を拾い集めた。彼女がそれに気が付いて「ありがとうございます」と言うと全てを拾って二人でホームへと向かう。
だがホームに辿り着いた瞬間に電車は無慈悲にも発車してしまった。

どうやら彼女も同じ電車に乗ろうとしていたらしく、駅を出て行ってしまう車両を見て「あ、」と切なそうな声を漏らした。

すると彼女は俯き気味に言葉を呟く。


「す、すみません! 私のせいで電車が!」

「いや、悪いのはあの男の人ですから。気にしないでください」

「でも……」

「それより落としたものって全部拾えてますか?」


その言葉にハッとした彼女は慌ててカバンの中身を確認し、そして再び俺へと視線を戻した。


「大丈夫です」

「だったら良かったです。電車のことは気にしないでください」

「……」


彼女が黙ってポーッとこちらを見つめていたので「ん?」と首を傾げた。


「俺の顔、何か付いてますか?」

「っ……あ、いえ。優しい高校生だなぁと」


と言いながらも彼女の大学生くらいの若さのように思えた。
どうやら乗る電車は同じらしく、次の電車が来るまでホームに立って待っていることになった。


「どこで降りる予定なんですか?」

「えっと、有楽町です」

「俺と一緒ですね」

「い、家がそこに?」

「いや、バイト先なんですが……」


そう話しながらあることを思い出すと学校鞄の中のファイルを取り出した。
そしてその中から細長い紙を掴むと隣に立つ彼女に手渡す。