────────────────────
────────────
────────
どうしよう、桐谷先輩の彼女見ちゃった!
「桐谷先輩! 彼女さん来てますよ!」
「は?」
空になったお皿を運んでいる彼を引き止めてそう告げると表情をしかめた桐谷先輩が客席に目を向けると私が今さっき席を案内した女の人に視線が止まった。彼女が恋人で間違いないのだろう。
最悪、と小さく呟いた彼が私の隣を通りながらバックヤードへ戻る。
「小野、注文取りに行くの代わる」
「え、いいんですか?」
「あんまり他人に任せたくない」
「……」
桐谷先輩ってやっぱり……
「(めちゃくちゃ彼女のこと好きだよね)」
他の人に写真を見せたくなかったり、彼女がいることを知られたくなかったり、てっきりあんまり好きじゃないからなのかと思っていたけどそれは逆で。
本当に大好きだから誰にも見せたくないし、邪魔されたくないんだ。
なんだか悪いことしちゃったかな。でも私はいつものクールな彼よりも今の彼の方が好きだなと思った。
「何笑ってんの、働け」
「えへへ」
新しい愛の形を目の当たりにして私は何故だか心が温かくなったのだった。