「で、何にすんの?」

「……」


じゃあ、とメニューを開いた時それを彼に奪われた。
へ?と顔を上げると額に柔らかい感触の何かを当てられた。それが彼の唇だと分かった瞬間に顔が真っ赤になるのが自分でも理解出来る。


「これでいづらくなった?」


そう悪戯っぽい笑みを浮かべる彼に勝つ術なんてこの世には存在していないのではないかと思った。




「あれ、もう帰っちゃうんですか?」


レジ対応をしてくれたのは初めに席に案内してくれた小野さんだった。


「桐谷先輩の彼女さんですよね?」

「やっぱり分かってたんだ」


どうして、と理由を聞こうかと思ったが「残念です」と微笑まれたのに何も言えなくなった。
桐谷くんが言うような子には見えないんだけど。天真爛漫で人懐っこい笑顔の彼女が頭に残る。

だけど桐谷くんと仲がいいんだろうな。だから私のことを見ただけで分かったのかも。


「桐谷くん、ちょっと意地悪だけど後輩思いで優しいと思うからよろしくお願いします」

「?」


私の言葉の意図が分からないのか頭を傾げた彼女を微笑ましく思うとお店を後にした。