慌ててフロアに戻るといよいよお店も混み始めていた。何とか桐谷先輩を説得できてよかった。


「しーちゃんお待たせ。助っ人呼んできたよー」

「へ……き、桐谷先輩?」

「突っ込みたいこと多いと思うんだけどとりあえず今は放っておいて」


どうやら私に脅されたことで機嫌が悪いのが顔面にも出ているにも関わらず、イケメン度は相変わらずの桐谷先輩を警戒してか、少し私の後ろに身を隠すしーちゃん。
未だにしーちゃんは桐谷先輩に苦手意識があるらしく、この二人の間を私が取り持たなければという責任感に駆られた。

私の隣に立っている桐谷先輩はそれだけで存在感が凄いのだが新入りの私達二人よりも仕事ができそうなのが様相で伝わってくる。


「取り敢えず夕方に新しくパートさんとかやってきてくれるので、それまで三人で頑張りましょう!」

「何で小野がフロアリーダーみたいになってんの」

「桐谷先輩は混み合う前にちょっとくらい機嫌直してくださいね」


私は気合いを入れ直すといずれ戻ってくるだろう店長のために働くことを決心した。