「おい、今何撮った?」

「ちょっとお写真を。わー、流石桐谷先輩! 下からのアングルでも格好いいですね!」

「話聞けよ」


撮れた写真を確認するとそれを画面越しに彼に向かって見せつけた。

そして、


「私の学校にイケメン研究部というものがありまして、この写真と一緒にこの人が私のバイト先で働いているという情報を売ります」

「は? そんな研究部あるわけないだろ」


お前の学校流谷だろ、と県一番の難関校の名前を出す彼にノンノンと首を横に振る。


「あります。疑ってるなら調べてみてください」

「……」

「これを見たらどうなるでしょうね。ウチの学校女子が多いので桐谷先輩を見にこの店にやってきそうです」

「そんなことしたら店に迷惑だろ」

「そうですか? 沢山お客さん呼べて店長は喜んでくれると思いますけど」

「……」


桐谷先輩はしばらく黙った後、「最悪……」と声を漏らした。


「ちょっとは店長とのこと協力してやろうかと思ったのに」

「へ?」

「いいよ、今日だけでしょ。そんな面倒なことになるなら一日我慢した方がマシ」


フロア用の制服に着替えようとしているのか更衣室に足を向けた彼に「ちょっと待ってください!」と手を伸ばした。


「きょ、協力って一体なんですか!?」

「何って……だからお前と店長とのこと」

「え!?」

「残念だけど、今日からお前も花宮同様俺の敵なんで。もう何を言われても小野にはアドバイスしません」


そう言い残すと更衣室に入りバタンと強くドアを閉めた。取り残された私は彼に言われた言葉を頭の中で反復させる。


しまった、早まってしまったかもしれない。私はそう悟るのであった。