《小野? 聞いてんの?》

「あ、す、すみません! それで大変なこととは?」

《まぁー、今の高野兄状態? それ以上かもね。厨房に下がった後も何度か客から要望があってちょっとした騒ぎになったっていうか》

「う、うわぁ……」


ここ普通のファミレスだよね? 私は頭を傾げた。みんな何かホストクラブと勘違いしてない? 確かに顔面偏差値高めだけど。
だけど桐谷先輩が嫌がりそうな騒動だなと感想が漏れると、これを聞いて更に彼への説得が難しくなったような気がした。


「だけど何としても桐谷先輩をフロアに立たせたいんです! 店長とのデートのために!」

《デート?》

「あ、ちが! お、お店のためですよ! 決まってるじゃないですかぁ〜!」


危ない危ない、下心で動いていることがバレてしまうところだった。
冷や汗を掻いていた私に彼女が「そうね」と、


《ないってことはないけど》

「本当ですか!?」

《ある画像送るからそれで脅せばどうにかなるかも》

「脅す……」


私、別に自分の手を汚してまでも桐谷先輩にフロアに立って欲しいとは思ってないんだけどなぁ。
花宮さんが言うのだからかなり凄い画像が送られてくるんだろうなと覚悟しつつ、通話を切って待っているとLINEのトーク画面に彼女からとある写真が送られてきた。

それを見た私は「え?」と目を丸くする。


「(この写真って……)」


だけど確かにこれがあれば何とかなるかもしれない!
私は慌てて休憩室にいる桐谷先輩の元へと戻った。