私の姿を見た瞬間、しーちゃんの表情が緩む。


「瑞希ちゃん来てくれたんだ」

「お待たせ、大丈夫だった?」

「な、何とか。忙しい時間帯は店長も手伝ってくれてたし」

「え、店長もフロア出てたの!?」


何それ、店長に接客された人羨ましい。私も店長に席案内とかされたいよー!
と、言っている場合ではなかった。私は「手伝うね!」と来店されたお客様のところへも向かった。

何とかお昼を切り抜けて次は夕方頃が混み出すと思われる時間帯。流石に二人で回すのはキツくなってきた。
すると丁度パフェを作っているときに店長が顔を覗かせた。


「小野さん大丈夫?」

「店長〜」

「ごめん、俺シフト間違えたね。ちゃんとこういうときのことを見越してフロアの人数増やしておくべきだった」


しかし忙しい時は店長のフォローもあったので何とかなった。また混み出したら店長に手伝ってもらえればまだ大丈夫かもしれない。
なのに私はそのときの店長の姿を見て愕然とする。いつものよれよれYシャツではなく、しっかりとアイロンが掛けられたシャツを身に纏っていたのだ。

ま、まさかこの人。思わずホイップの入った袋を握る手に力が入る。


「ま、まさか店長……何処か行くんですか?」

「……実は今から店長会で」

「えー! 混んできたらどうするんですか!」

「……」

てんちょぉおお!という私の叫びに「ごめん!」と土下座する勢いで謝る彼。顔面蒼白な店長をこれ以上責めることは出来ないのはきっと惚れた弱みである。
すると彼は顔を上げるとふと思案顔になった。


「けど、何とかならないわけでもないというか」

「と、言うと?」

「……厨房のスタッフをフロアに回すことができたら」


厨房のスタッフ……?

店長の考えに私は「誰だ」と首を傾げた。