「話は分かりました。送り迎えのことはまたご兄妹で話し合っていただければと。ウチは基本的に未成年のアルバイトは集まって帰らせておりますし、もし一人の場合は私が駅まで車で送るようにしているので」

「そうですか、安心しました」


やっと彼の表情に笑顔が戻ったところでしーちゃんに語りかける。


「雫、俺は心配なんだよ。あんなに人前に出るのさえ震えていたお前がファミレスでアルバイトなんて」

「……心配しすぎだよ」

「けど、」

「次私に内緒で同じことをしたら二度と口聞かないから」

「えぇ!? 普段から全く口聞いてくれないのにそれ以上!?」


嘘だと言ってくれ!と擦り付くお兄さんを鬱陶しそうに遠ざけるしーちゃんを目の当たりにした私たちは口がぽかんと開いたままになってしまう。


「しーちゃんって意外と」

「家族には辛辣なんだな」

「紅が辛辣なんて言葉を知ってることに吃驚だよ」


何だと!?、と声を上げた紅先輩に店長の視線が向いたことで私たちは思わず動きを止めてしまった。
店長は二人の元から私たちが座っているところに近寄ってくると普段とは違う、真剣な表情で私たちを見下ろした。


「みんなも! もう二度と自分たちで不審者なんて捕まえるとか考えないで!」

「っ……でも、結局は不審者じゃなくてしーちゃんのお兄さんだったし」


それに、


「ここでもし捕まえられたら、店長の私の見る目も変わるかなぁ、なんて……」


思ったり、と呟こうとした時、店長が目を見開き今までにないくらいに大声を出した。


「そういうことじゃない!」

「っ……」


交番内に響き渡る彼の声に私は言葉が出てこなくなった。