店長は大人だ。私が子供っぽく、我儘に思えてしまう程に。
だから何とか作り笑いを浮かべて「いってらっしゃい」と告げると、彼は漸く安心したように微笑んだ。


「じゃあ、お留守番よろしくね」


そう言って彼が私の頬に手を伸ばす。一瞬のこと過ぎて反応が送れ、私は思わず体を硬直させた。
彼の細い指が私の頬に触れた、と思えばそれはすぐさま遠ざかっていった。

付いてたよ、と彼の指には溶けた生クリームが付いていた。
あぁ、生クリームか。もしかして手に付着したやつが顔についてしまったのかもしれない。

店長が指が私に触れた。


「っ……」


思わず彼が触れたところに手をやる。わわわ、なんか意識したら……なんか!!
急激に体温を上昇させる私に店長は「え、」と戸惑ったように声を漏らした。


「ご、ごめん。でも付いてたから。それに小野さん普段から俺に抱き着こうとしてるし」

「っ……なに勝手に触ってるんですか!」

「理不尽すぎない!?」


分かっている、店長は何も悪くない。だけど普段身体に触れさせてもくれない彼から突然触れられ、思考が一瞬止まってしまったのだ。