「何でもないです」

「え、何で今ちょっと拗ねたの?」

「別に。とにかく店長には関係のないことです」

「(……学校のことかな?)」


少し寂しそうに「そっか」と微笑んだ彼を見てうっと胸が詰まる。
三十路手前の男性の困った笑顔、本当に弱いのだから。きっと私が同級生の男子にドキドキしないのは年上の男性が好みだからだ。

そうだ、店長なんかずっと私のことで困っていればいいんだ。


「何か困ったことがあったら言ってね。お父さんとかに言えないこととかもあると思うし」

「……店長は私のお父さんになりたいんですか?」

「え゛、そうじゃないけど」


言葉が詰まる店長の姿に私はちょっとだけ笑みを取り戻すと彼も安心したように口元を緩めた。
彼は「じゃあお仕事頑張って」と言うと事務室の方へと戻っていった。

相変わらずだな、一応この前宣戦布告的なことを言ってしまったんだけど。
全く気にしていないような素振りをするのは大人の余裕からなのだろうか。


「(早く大人になりたい……)」


じゃないと、きっと店長は子供の私には振り向いてくれないから。
だからこれからは子供っぽい理由で彼を振り回すのはやめよう。

私が何でも自分で解決できるような大人になれば、店長も私を見てくれる?