しーちゃん、本当に怖いんだろうな。だけど他人に迷惑をかけたくないというのも彼女の本心で、それは彼女の性格から来るものだから否定しづらいし。
もしその話がバイト中に知られてしーちゃんが困るのも私は見たくない。だけどこのままなのは絶対に駄目だ。


「(勝手に太田でストーカーとかには敏感になっていると思ってたけど、あれはアイツに限定した話だったのか)」


それか太田がストーカーをするのを下手くそだったか、今回の不審者のストーカーが特別上手いかって話だけど。
というか何でみんなそんなに簡単にストーカーするの? 私だって店長のストーカーしたいのに。

って話が逸れてる。

どうにかしてその不審者捕まえられないかな。そんなことを考えながらフロアからバックヤードへ戻っていると前をちゃんと見ていなかったこともあって誰かとぶつかってしまった。

顔を上げて私は安堵の息を吐き出す。


「良かった、店長か」

「え、何それちょっとショック」

「嘘です、すみませんボーとしてて」


えへへと笑うと彼が心配そうに私を覗き込んだ。


「大丈夫? なんか元気なさそう」

「え、そうですか? バイトの日は大抵元気ですよ!」

「そうかな……」

「……元気ないって、分かるんですか?」


すると彼は「分かるよー」と、


「小野さんが来てそろそろ三か月は経つし、その間ずっと一緒に居たんだから。少しぐらいの違いには気付けるよ」

「っ……」


何でこの人は、私に期待させるようなこと言うんだろう。


「(もう誰かを好きになることはないって言ったくせに)」


なのに、私にはこんなに苦しいぐらいに好きにさせておいて。
最近ちょっと店長はいい加減なのではないかと思い始めた。