「どうかしたんですか?」

「急遽今から支店の方を見に行くことになって、俺出るけど頑張ってねって」

「えぇ!?」


頑張ってって店長いなくなっちゃうの? そんな、と寂しげに声を上げれば彼は一瞬ぐっと後ろに引いた。
そうか、休憩が終わったら甘えようと思ったのに店長居なくなってしまうのか。私のスウィートタイムが……


「生きて帰ってきてくださいね……」

「隣町の支店行くだけなんだけど、小野さんには俺が何処かに戦いにいくように見えてるの? もう直ぐ花宮さんも来るだろうし、寂しくないでしょ?」


そういう話じゃないんだけどな。店長ってば相変わらず私の気持ち、分かっていないんだから。


「(鈍感だなぁー……)」


だけどそこも好き。そろそろ私の気持ちの本気度にも気が付いて欲しいところ。
明らかにテンションが下がっている私を元気付けようと彼はあれやこれやと話題を広げてくれるが全く私の耳には入ってこなかった。


「直ぐ戻ってくるから、安心して?」

「……じゃあ戻ってきたら店長にハグしてもいいいですか?」

「え、それはちょっと……」


分かっている、本当は私に何も言わずに店を出ることだってできたはずだ。だけど休憩時間に店長がいないことで私がショックを受けるだろうと教えてくれたはず。
そういう優しさが、狡い。いつも私に冷たいのに、こういうときだけ優しくするんだから。