相変わらず店長は冷たいな、そう思いながら顔を上げると今度は赤い顔をした彼が立っていた。


「(可愛いなあ……)」


テレビで見かける若手俳優や友人が好きだという男性アイドルよりも、目の前にいるこの人が私にとって一番価値のある人物だ。
凝視するような視線に戸惑いを覚える店長は私との関係を気まずく感じているようで、「えーと」と会話の話題を探すかのように視線をあさっての方向へ向ける。。

よれよれの白シャツに下は黒のスラックス。まるで昼下がりの普通のサラリーマンのような格好。この人っていつも冷や汗掻いてる気がする。


「小野さんは毎日のように来てくれるね。仕事熱心で助かるよ」


へらりと笑った彼の目尻に皺が寄る。それは見るときゅっと胸が締め付けられるのだがやはりおかしいのだろうか。だってこんなに可愛いのにときめく以外の選択肢がないでしょうが。

私はわざとらしくぽっと顔を赤らませると、両手を頬に添えて「当たり前じゃないですか」と、


「店長に会うためなんですから毎日来ますよ!」

「っ……」


あからさまにぐっと息を飲んで後ろに後ずさったが私はそれを追い詰めるように彼を追い掛けた。彼
の表情は笑っているがどこか怯えているようにも見える。あぁ、こういう顔が好きなんだよなあ。私の数少ないS心が擽られる。

私が大好きなバイト先の店長は少し自分を前に出すのか苦手。
だから私がその分彼にグイグイと迫ってしまうのだ。