そっと骨張った鎖骨に顔を寄せると唇を落とす。どうしたら、どうしたら伝わるんだろう。
貴方のことが大好きって、どうやったら全部貴方に伝えられるんだろう。


「小野さん!」

「っ……」


顔を鎖骨から離されたと思ったら、強い力で体を引きはがされた。
上から私の顔を覗き見る彼の顔は仄かに赤くて、暗闇の中でもその熱が直に伝わってくるのが分かる。

私は今、一体何を……

と、


「小野さんがそうやって積極的になるのは男を知らないからだよ」


だけど彼の表情とは別に、囁かれるその声は今まで聞いた中でも低くて、私が知ってる店長じゃなかった。


「前に言ったよね、また同じようなことしたら……」

「っ……」


いつだか、彼をロッカーで迫った時のことを鮮明に思い出す。
店長からの警告を私は覚えていたはずなのに、気が付いたらまた自分から迫るような真似をしていた。


「俺は大人だから隠すのが上手なだけで、周りの男と何ら変わらない。その意味が分かる?」

「……」

「俺が本気を出せば小野さんなんて……」


彼はその言葉を続きを濁すともう一度真剣な表情で私の目を見つめた。


「小野さんがこんなことをしても何もされないのは相手が俺だから。だから、絶対俺以外の人にこんなことしちゃ駄目だよ」

「……店長にしかしません」

「……そういうことじゃない」


そうじゃないんだよ、と徐々に彼の声が小さくなっていく。
それだけで私は彼のことを困らせていることが明確になって、胸を強く締め付ける。