どうかしました?、と彼の手元を覗き込むとなんとドアノブがドアから外れてしまっていた。


「店長、やっちゃいましたね」

「……」


これで完全にここから出る術を失ってしまった。


「ご、ごめん。俺本当に何にも出来ない情けない奴だ」

「大丈夫です店長。実は言うと初めからあんまり期待してませんでした」

「それもそれで傷付く!」


大丈夫、何かあれば私が店長を守ろう。それくらいの覚悟はもうすでにある。
後は桐谷先輩が様子を見に来てくれるか、それか誰かがここを通りかかってくれるしか出る方法はないけど。


「小野さん大丈夫?」

「はい! 目も慣れてきたし、よくよく考えれば冷蔵庫に閉じ込められるよりまだマシだったなって」

「もっと怖いこと言うのやめてくれる?」


でも、と私は続けて、


「もし私がここに一人で閉じ込められていたら真っ暗な中パニックになっちゃったと思うし、ちょっと頼りないけど店長がいてくれて良かったです!」

「頼りない……まぁ、そうだね。俺ももし小野さんがこの部屋に一人でいたら、なんて考えたら心配でパニックになってたかも」


そう言って私の頭を優しく撫でてくれる店長。きっとその言葉は心からのもので何一つ偽りはない。
けどそれがきっと私じゃなくてもそうなんだと、思わせるには分かりやすすぎて……

店長が私のことを心配しているのは私が子供で、彼の部下だから。それ以上の想いを彼の中にはない。


「あ、小野さん。ちょっとジッとしてて」

「? はい」

「……あれ」


考え事をしていた私に何かに気付いた店長が私の肩をパッパッと払うように軽く叩いた。