「な、何って、取りたいものがあって」

「そんなところ立ってたら危ないよ。ほら、降りて」

「え、でももう少しで取れそうなんです!」



意地を張る私に「全くもう」と困り果てた店長は背後から私の体を支える。
店長の腕が私の腰に回り、まるで後ろから抱き締められる体勢に思わず心臓が跳ねた。

店長の胸板に私の背中が触れる。背中に意識が回り過ぎて指先の感覚を忘れそうになる。


「て、ててて店長! ちょっと離れてください!」

「え、でも小野さんフラフラしてるし」

「じょ、女子高生を抱き締めるなんてセクハラですよ!」

「えぇ!?」


彼の体が離れた隙に私は台から飛び降りる。
店長は顔を赤らめたまま、口元を手で隠しながら戸惑いを隠せていない表情で呟く。


「セクハラって……というかいつも抱き着いてこようとしているのは小野さんの方じゃ……」

「店長からだったら全然違いますよ!」

「えぇ、理不尽な……」


困ったなー、と頰を掻く店長。うぅ、可愛い。可愛いけど今のは許してはいけない。
だって私も心臓が飛び出るかもってレベルでドキドキしてしまった。


「(店長、いつも不意打ちで触るから吃驚する……)」