夏休みということもあり、平日でも家族づれの来店が多くそれなりに忙しい。
ホールは私と紅先輩と花宮さんで回している。お昼を過ぎて人が捌けるとそれぞれ休憩が与えられる。
さてさて休憩休憩〜、店長に珈琲淹れてあげよう。そう休憩室に向かっていると途中で「小野」と名前を呼ばれて足を止める。
振り返ると厨房から桐谷先輩がこっちに来いと手を振っていた。
「どうかしました?」
「悪いんだけどキッチンペーパー倉庫から持ってきてくんない? 今手が離せない」
「倉庫にあるんですか?」
「そう、多分余分に買ってあるから。今から休憩?」
「あ、はい! でも大丈夫です! 直ぐ持って来ますから!」
悪いな、と彼は申し訳なさげに顔をしかめる。桐谷先輩から頼みごとなんてレアなので特に気にはしていない。
行き先を休憩室から倉庫へと変えて歩き出す。そういえばあんまり倉庫って行った覚えないなぁ。いつも店長とか厨房の人が行き来しているイメージがある。
「ここか」
少しボロい扉を開けると埃が舞う。側にあった電気をつけると天井の蛍光灯が点滅した後に部屋を明るくした。
あんまり掃除出来てないのかな。物が多いし大変なんだろうけど。私は部屋に足を踏み入れると桐谷先輩に言われたキッチンペーパーを探す。
うぅ、場所とか聞いとけばよかったなぁと探していると棚の上にキッチンペーパーと書かれたパッケージを見つける。どうやらスーパーで買ったものをそのまま置いているらしい。
というか棚の上とか、届かないじゃん。何か乗るものはないかと辺りを見渡すと丁度台になりそうな硬いダンボールを見つける。お店のものを踏むとか申し訳ないけどこれしかない。
私は靴を脱ぐと台をキッチンペーパーの棚の前にセッティングしてその上に乗る。しかし台に乗ってもギリギリ袋には手が届かない。もう少し、もう少しなのに!
「おりゃ〜! 届け〜!」
爪先立ちで何とか袋に触れる。後はこれを引っ張るだけだ。
と、その時。
「お、小野さん!?」
「っ……」
名前を呼ばれて振り返ると倉庫のドアから店長が顔を覗かせる。そして慌てて駆け寄ると「何してるの」と表情を真っ青にする。