遂にやってきた夏休み! 毎日店長の側にいられるなんて幸せ〜。


「全然毎日じゃないからね。シフト入れ過ぎちゃ駄目だよ」


そんな気持ちを店長の前で吐露すると、呆れたように微笑んだ。
店長的には毎日私が店に来ているのは気が休まらないのかあまり嬉しそうではない。


「こんなに時間が有り余ってるのに暇なんかしてられませんよ! それぐらいなら店長と一緒に働きたいですもん!」

「でも夏休みの宿題とかあるでしょ。小野さんの学校だと量とかも多いんじゃ」

「あ、宿題は夏休み二日目で読書感想文以外終わらせました」

「は、早い!?」


昔から長期休暇の宿題は速攻で終わらせるタイプだった。それに中学の時に比べると宿題の量も少なかったから直ぐに終わってしまったし。
普通何かクラブに入っていたら夏休みはそれに費やすんだろうけど、残念ながら私は部活にも入っていない。

それに夏休み沢山働くことで普段よりもお金貯まるし、店長の側にもいられるし一石二鳥だ。

店長は「変なところで優秀だよね」と困ったように肩を落とす。


「だけどちゃんと休めるときは休んでね。小野さんは四月からだから大丈夫だけど扶養控除内に収めないと大変なことになるから」

「大変なことって?」

「うーん、家族の人に迷惑が掛かる?」

「っ……」


それは、困る。とても。店長と毎日会いたいけど、日本の法律がそれを許してくれないということなのだろうか。
折角の夏休みなのに、ずっと楽しみにしていたのに何だか残念だ。


「店長と会えるの、バイトしかないから」

「……バイトじゃなくても、シフトがない日でも遊びに来たらいいよ。俺は忙しいかもだけど誰かしらはいると思うし」


ね?、と頭を下げて悄気ていた私を励ますように彼が頭を撫でる。店長に会えないんならバイトに来る意味はないのだけど。
だけどその大きな手にキュンと胸が高鳴ると今日も店長のために仕事が頑張れそうだ。


「店長、もしかして私に友達がいないとか思ってます?」

「え、違うの? 凄く寂しそうだったから」

「違いますよ。普通にいますし。今度ケーキバイキングも行くし」

「そ、そっか。よかった。いいね、ケーキ。若いなぁ」


店長だってまだ若いくせに。彼は「ほらほら、働こう」と背中を押して私をホールへと向かわせる。
いつかバイト先以外でも店長と会える日が来ればいいなぁと考えながら、私は今日も仕事に励むのであった。