私は視線を本の文章に移す。異性と話す際は目をよく見て落ち着いて……

よ、よしっ……


「こん、にちわ……」

「しーちゃん、凄く古典的なところからいくんだね」


だって初めは挨拶が大事って書いてるんだもん。


「はい、こんにちわ」

「っ……」


だけどそんな意味不明な私の言葉にも高野さんは普通に返してくれる。


「つ、次は……」

「っ!」


限界が来るまで彼の顔を見つめると不意に表情が硬くなった気がした。数十秒見つめ合い、私は本に書かれていたあることを思い出す。
人に何かをお願いするときは少し顔を下に向けて目を潤ませる……


「あ、あの……高野さんにお願いがあります」

「……なんでしょう」


そしてそのまま目を見つめたままで……


「今度、二人でどこか行きませんか……?」


首をこてんと倒して疑問系の言葉で締める。
すると一瞬だけ彼の表情が赤く染まった。気のせいかな。


「え、俺でよかったら」

「っ……あ、ほ、本に書かれてたことで」

「あ、そうですよね」


たはは、とお互いに笑みを垂らす。


「本当に宇佐美さんからデートに誘われたのかと思いました」

「っ……へ!?」