「しーちゃんも何かない? 蒼先輩をモテなくさせる方法」

「え、わ、私は……」


突然そんなことを聞かれても頭は真っ白なわけで、


「ご、ごめんなさい高野さんが悩んでいるのに何も思い付かないゴミみたいなやつで私の脳みそなんて役立たずだしある意味もなくて周りの人と同じ脳の構造をしているということに恥じるべきなのにこんなのうのうと生きててごめんなさい今すぐ首を吊って死んだ方が」

「し、しーちゃん! そこまで思い詰めないで」

「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」


高野さんはこんなに悩んでいるのになんで不甲斐ないんだろう。いつも助けてもらっている分何か恩返しをしたいのに。
うぅ、と自分への落胆の声が漏れると彼も「気にしないでください」と諦めたように微笑む。


「でも確かに誰か相手がいるっていうのはいいかもしれませんね。実際に効果があったわけですし」

「え、私ですか? すみません、私は店長と結婚する約束が」

「小野さんは店長さん一筋なので大丈夫ですよ。架空の人間ってことです。それだと誰にも迷惑掛からないだろうし」

「えー、でもそんなの直ぐバレちゃいますよ。プレゼントのぬいぐるみに盗聴器仕掛ける女がそう先輩に彼女がいるって知ったらその相手を突き止めないわけがないですし」


今サラッと凄いことを聞いてしまった。プレゼントに盗聴器? これは私が思っている以上に深刻な問題なのかもしれない。
なんの役にも立てない自分が申し訳なく思っていると瑞希ちゃんは私が読んでいた本に気が付いたようで「何を読んでたの?」と中身を覗き込んできた。


「あ、人の目を見て話せるようにって」

「へー! しーちゃん勉強熱心だね!」


でも、と、


「この本読んでも実践に移せないから全然意味がなくて折角お給料でもらったお金で買ったのにこんな無駄な買い物をしてしまってこのお店にも申し訳ないしお金の使い方を間違えた自分も馬鹿だなって罵っていた途中でして」

「ストップネガティブ! 大丈夫! 実践相手なら私がなるよ!」

「瑞希ちゃん……」