「それでこの間店長に制服を貸してくれたお礼に私がどうにかしますって約束して、それでなんとかしたくて私ある噂を店で流したんだよね」

「な、何？」

「蒼先輩は花宮さんと付き合ってるって噂！」

「え！？」


彼女の言葉に思わず口元を押さえる。あまりの驚きに珍しく大声を出してしまった。


「ほら、相手がいたらきっとみんな諦めるかなーって思って。花宮さんこの店じゃ一番美人だし、あの人だったら誰も勝てないだろうなって」

「だけどそれは花宮さんの許可もなく言ってしまったみたいで、それはそれで迷惑を掛けてしまうだろうと」

「でも実際にそれでラブレターの数は少なくなったんだよね」

「そうですけど」


私は頭の中で高野さんと花宮さんを並ばせる。確かに美男美女でお似合いだから、誰も文句は言えないと思う。
だけど花宮さんに彼氏がいると知っている私はそのまま放っておくことも出来ずに、


「……で、でも……花宮さん、彼氏さん、いるよ」

「え、そうなの！？」

「う、うん……この間本屋で会って」

「うわー、そうなんだ！ でも確かにあんな美人に彼氏がいないわけがないよね！」

「バレたら花宮さんも怒りそうですね」


皆花宮さんに彼氏さんがいるの知らなかったんだ。じゃあ、私が彼氏さんを見られたのはレアだったのかもしれない。
瑞希ちゃんは「いい方法だと思ったんだけどなー」と腕を組んで考え込む。