バイトの休憩中、人と上手く会話するために買った会話術の本を読みながら過ごしていると扉の前が騒がしくなり、目をやると瑞希ちゃんと高野さんのお兄さんが休憩室に入ってきた。
「えー、いい方法だと思ったんですけど。実際にそれからはラブレター来てないし」
「ですがそれは花宮さんも巻き込んでしまうことになりますし、彼女に黙ってそういう噂を流すのはどうかと」
「そうですかー……」
悩ましく会話を交わしながら入ってきた瑞希ちゃんは私を見ると「あ、しーちゃん!」と声を上げてそれに会釈をする。
「早めの休憩だったんだね」
「う、うん、お疲れ様」
「お疲れー。あ、しーちゃんも良かったら一緒に考えてくれない?」
「え?」
一体何をだろうと首を傾げると彼女は「あのね」と、
「蒼先輩お客さんからモテモテでさー、ラブレターとかよく貰うんだけどそれを無くしたいんだよね。それでいい方法はないかと」
「……ラブレターは、素敵だと思う」
「いや、いいんだけどその量が本当半端なくてね。結構な悩みなんだよ」
そうか、モテる方もモテモテで困っているのか。大変だな。
でも高野さん格好いいし優しいから女の人が放っておくわけないし。
彼は「なんかすみません」と申し訳なさそうに言うものだから首を横に振った。