な、何だ。バレてたのか。いやしかし好きな人がバレると恥ずかしいものだな。
私たちは数秒無言になって見つめ合った。

そして、


「小野って老け専？」

「老けっ、確かに店長は老けてるけどそれだけじゃないもん！」


お前昔から周りと好み変わってたもんな、と哀れみの目で見られて「そんな目で見るな！」と声を荒げる。あぁ、どんどん話の展開が変わっていっている気がする。
私はコホンと咳き込み、そして話を戻す。


「まぁそれでね、私がしてることって結構酷いことだったんだなってちょっとは反省したの。だけど先に言っておくと私これからもアンタには酷いこと言っていくから」

「……」

「アンタが私のこと好きじゃなくなるまで言うから。私はアンタのこと好きになることはこれからずっとないと思うし、変に期待させるのも悪いからね」


私の言葉に太田は「おう」と返事をする。その表情には一つも動揺が現れてはいなかった。


「私は、曖昧な態度取られる方が嫌だから」


店長は優しい。だから私に強く言えないって分かってる。それが曖昧な態度とは言えないけれど、私はたまにそれを焦ったく思う。
ハッキリ断られたら、それはそれで悲しくなるくせに。


「そんなにあのおっさんのことが好きなのか」

「おっさん言うな。ていうかアンタがもう私のこと諦めてたから今の話は忘れてもらっていいから」

「いや、まだ好きだし諦めないから」

「……」


思わずズルッとズッコケそうになった。コイツどこまでしつこいんだ。まあ二年もストーカーされてここで諦められてもなって感じだけど。
私もここまで図々しくなりたいよ。今でも相当図々しいとは思うけど。


「何で諦めないの。ここまで言われてたら普通諦めるでしょ」


半分呆れながらそう言うと彼は「仕方ねぇだろ」と、


「それが恋なんだから」

「……」


その時、彼の言葉にどこか納得させられた自分がいて、図星を突かれたように胸がドキッとした。
私が店長のことが諦められないのも、それが恋だからって思ってしまった。

私はわなわなと震える唇を動かしながら顔を真っ赤に染める。


「何でアンタに納得させられなきゃならないのよぉ！」

「……？」


頭にハテナを浮かべる太田を、私はずっと許せないんだと思う。