「でもあれだな。多分店長は小野のことを採用して後悔してるんじゃない? まさか自分のことが好きでこんなに迫られるとも思ってなかったはずだし」

「仕方名がないですよ、これは運命なんですから! 店長緒が私のことを好きって言ってくれるまで、私諦めませんから!」

「(好き、ねぇ……)」


ふふふ、と笑った私に花宮さん紙コップを持って立ち上がる。どうやらおかわりのようだ。
でもこれで店長と毎日のように一緒にいられるし、それはそれは幸せな毎日を送っている。

私はテーブルに肘をついて足をリズム良く振った。改めて自分と店長の出会いが素敵なものだったなと再確認したのだ。

と、休憩室の扉が開いて私たちの視線は自然にそちらへと向けられた。


「失礼しま……あ、小野さん」


私も見るなり顔色が真っ青になった店長。いきなり10歳ほど年を取ったように元気がなくなるのが見える。
が、そんなことはお構いなしに私は「店長!」と椅子を蹴り飛ばす勢いで立ち上がった。私の次の行動が見え、「失礼しました~」と部屋を後にしようとする店長を逃がさない。


「待ってくださいよ、店長!」


結局出会いなんて、誰かに話したところで私の気持ちに変化はない。
最も大事なのは現在進行形で大きくなる彼への恋心なのだから。


「うわ、小野さん追いかけてこないで!」

「どうして私から逃げるんですか?!」

「だって俺に抱き着くつもりでしょ!?」


追いかければ逃げる。まるで縮まらない年齢の差のようだ。
だけどいつかは絶対に追いついてみせるんだから。