これで何とかストーカー問題は解決しただろう。あれからジョイストに来るまで後をつけられている感じはなかったし、流石にあそこまで言ったら私のこと嫌いになると思う。


「(まぁ、ちょっと言いすぎたかもしれないけど)」


けど今まで何度振っても諦めなかったし、一度ガツンと言わなきゃ分かってもらえないと思ったから。可哀想だけど次の女の子を早く探した方がいいなアイツは。

一件落着とフロアに続く廊下を歩いていると目の前を見覚えのないシルエットが通った。あれ、あの少し猫背な背中は、いやでも制服が……?


「店長?」

「っ……」


そう声を掛かると彼がゆっくりとこちらを振り返る。やっぱりそこにいたのは店長だった。
しかしいつもの店長ではない。彼は男子のフロアの制服に身を包んでいたのだ。


「え!? どうしたんですか店長! またコスプレですか!?」

「コスプレって、ファミレスで働いてるんだからこの服着たってコスプレにならないでしょ」


いつものよれよれのシャツじゃない店長は新鮮でまじまじと見つめてしまったからか、彼は照れたように頰を赤く染めた。
本当にどうしたのかと尋ねると彼は恥じらいながら理由を話してくれた。


「実は小野さんは知ってると思うけど宇佐美さんが家の用事で来れなくなって、それでもう一人来れなくなっちゃった子がいて、フロアの人数足らないんだ。だから急遽俺が接客することになって。まぁあのくしゃくしゃのシャツではお客さんの前には出られないから」

「分かってるならアイロン掛けたらいいのに」


でもそっか。こういうこともあるんだ。確かに店長の仕事って事務だけじゃないもんね。これまでもフロアに出て仕事をすることとかあったのかな。

それにしても店長が接客か〜〜……


「あ、私今からお客さんとしてくるので接客してくれませんか!?」

「人手足りないって聞いてたよね今」