そう、この太田という男は中学の頃から何故か知らないけど私に惚れている。そしてこの男の凄いところは何度私に振られてもめげずに私に告白してくるところだった。最早その姿はやられても起き上がってくるゾンビのようだ。
そもそも何が彼をこんなにも焚きつけるんだろう。私はこんなにも全力で拒否反応を示しているというのに。

大声で喧嘩にしていたからか周りの人がこちらをチラチラと見つめているのが分かる。そろそろ引き上げないと面倒なことになりそうだ。


「とにかく、もうストーカーみたいなことやめてよね。それで金輪際私の目の前に現れないで」

「っ……お、俺はお前がバイト始めたって聞いて、それで同じところで働こうと思って」

「絶対にやめて。それやったらマジでキレる」


今もキレてるだろうが!、と言う彼に「分かってるんだったらもう消えてよ」と冷たく返事を返す。どうしたらこの男は私のことを諦めてくれるのだろうか。そう考えた時に一番初めに浮かんできたものを私は採用して口にした。


「私好きな人が出来たんだよね。だから本当にあとつけてくるとかやめてほしいんだけど」

「は!? 聞いてねぇぞ! どこのどいつだよ!」

「バイト先の人。はい、もうこれで話はおしまいだから」


ここまでしたら流石にもう私のことを諦めるだろう。
私ははぁと盛大な溜息をその男の目の前で吐くとバイトへ行こうと昇降口に足を向ける。

そしてその後をついてきそうになった太田を振り返ると、


「ついてきたらぶん殴って警察突き出すから」

「っ……」


彼が足を止めたのを確認すると私は安心して靴箱から自分のローファーを取り出した。