「太田、いい加減にしなさいよ」


そう名前を呼ばれ、太田はギクリと表情を硬くした。


「な、何のことだよ!」

「私のあとつけるのやめろって言ってんの」

「はぁ? そんなことしてねぇよ! 何処に証拠がっ」

「じゃあそんなに慌てて何処に行く予定だったの?」


私がそう聞くと彼はあからさまなぐらいに戸惑った様子で「えっと」も話を止めてしまう。そこでもっと上手く追及を交わさればいいのにこの男は……

男子の平均身長よりも下で、顔も平凡を極め、そして髪の毛だけは無駄に明るい色をしているこの男。
太田は私の中学の同級生だった。そして彼は中学の頃から私のストーカーを続けているのだった。


「最近やっと諦めたのかって思ってたのに、アンタまだこんなことしてるの?」

「な、何って別に何もだな。そもそもお前にストーカーなんか」

「私のこと追いかけて同じ学校進学するってこと自体がストーカーだわ!」


コイツから離れたくて地元でも進学校だったここを受験したのにまさか同じ高校を受験した上合格してくるとは、この男の執着心も侮れない。


「そこまでしてんだからそろそろ俺を好きになれよお前は!」

「はぁ!? 気持ち悪いって言ってんの分かんないの!? 誰がアンタのこと好きになるか!」


うわぁああ! 気持ち悪くて蕁麻疹出て来そう! 私本当に昔から太田アレルギーなんだよねぇ。
全身を掻き毟る私に振られたショックでか太田は一瞬眩んだように立ち尽くした。


「おま、これで俺のこと振るの何回目だと思ってんだよ」

「知るか、んなもん」

「51回目だ!」

「そこまで振られてるんなら諦めろよ! どうしてまだ脈あるとか思っちゃってんのこの勘違い男!」