その翌日、しーちゃんから急用が出来てしまったのでバイトに行けなくなったと連絡が来た。


「(ここ最近一人でバイト行くの続いてるなぁ……)」


でもしーちゃんが勘付く前に色々片付けないと。あの子怯えちゃったりするし。
机の中のものを鞄の中にしまい、よいしょっと腰を上げると友人二人が話しかけてくる。


「あ、瑞希今からコスメ見に行こって話してたんだけど一緒に行こうよ」

「あー、今日はいいや。もうバイト行くし」

「え、早くない?」

「うん、行く前にちょっと色々ね」


それを聞いた彩葉と光里は顔を見合わせて揃って「あー……」と声を漏らす。


「確かに、最近ちょっと静かだなって思ってたけどね」

「え、二人とも気が付いてたの!?」

「そりゃあ、瑞希のあとついてんだから一緒にいる私たちも気が付くっていうか」

「むしろよくアレで隠し切れてるって思うよね」


相変わらずズケズケと容赦のない二人だ。しかし今日ばかりはそんな二人に賛同するしかない。
なんて言ったってヤツはもう二年も私のストーカーをやっているのだから。


「じゃ、アンタのストーカーくんによろしく!」

「よろしく〜」

「本当二人って他人事だよね」


私は二人に別れを告げると教室を出て昇降口へと向かった。
真っ直ぐ続く廊下を歩いていると周りの生徒たちの騒ぎ声に紛れて確実に私の歩くスピードと同じ足音が耳に届く。


正直言ってもっと上手くストーカー出来ないのかと思いながらも昇降口手前の角を曲がると足を止めて直ぐ側の壁はと体を凭れさせた。
するとドタドタと慌てたような足音が角の向こうから聞こえてくる。そして勢いよく現れたその男は私の顔を見て「うおお!」と足を止めた。


「な、なんっ、お前!」


顔を青くするその男を冷たい目で睨むと私は壁から背中を離した。