「じゃあね、瑞希。バイト頑張れ〜」

「うん、またね〜」


そう手を振り返して彩葉と光里と別れた私はジョイストへと足を進める。
時間を確認しようとスマホを取り出すとその待ち受け画面を見てうっとりと表情を緩めた。

それはこの前撮った蒼先輩の制服を着た店長と私のツーショット写真であった。嫌がる店長をなんとか説得し、誰にも見せないというのを条件に撮ってもらったのだった。
はぁ、この困惑した表情可愛いなぁ。見ているだけで元気がもらえてきちゃう。一生の思い出にしよっと。

時間を確認して画面を真っ暗にさせるとその暗い画面に自分以外の何かが映った。ふと後ろを振り返ってみるとそこには誰もいなく、再び前を見て歩き出す。
しかし足音が自分のものと誰か知らない別の人の二つ聞こえてきていることにはずっと気が付いていた。再び足を止めて後ろを振り返る。


「……」


早くバイト先に行こう。



制服に着替えて溜息を吐きながら更衣室を出ると花宮さんとバッタリ鉢合わせする。


「どうしたの、浮かない顔して。今日店長来てたでしょ」

「あー、はい。何だか最近誰かにあとをつけられているような気がするんですよね」


そう言って肩を落とすと彼女は「大丈夫?」と心配そうに顔を傾ける。


「ここら辺住宅地が多いから人通り少ないし気を付けてね。アレだったら駅まで店長に迎えに行かせるし」

「花宮さん、店長の扱い可笑しいですよね」


バイトが店長に指示できるって凄いことだよね。確かに花宮さんの方が遥かに頼りになるけど。
でも店長が駅まで迎えにきてくれるっていうのはなんかいいなぁ。むしろもうそこからお店に向かわず何処かデートを行きたい気分。

フロアに入ろうとすると丁度店長が休憩室に入ってきた。