「何それ、つまり一目惚れってこと?」


そう言った花宮さんに「はい!」と元気よく返事をした。


「私はあの日、王子様もとい店長と運命の出会いを果たしたのです」

「王子様……あのおっさんが?」

「はい!」


別に店長をおっさんと言われても特に反論はしない。まぁ確かに見える人にはそう見える。
店長が王子様であるのは私だけが知っているだけでいい。

花宮さんは飲み干した紙コップを座りながら部屋隅のゴミ箱に投げた。見事一発でゴミ箱に入ったそれに「おお!」と小さく拍手を送る。


「ていうか、それ本当に店長だったの? 不良に絡まれた女子高生助けにいくとか、普段のあの様子からは全く想像がつかないわ」


確かに知れば知るほど店長は助けてくれた時の様子とは掛け離れた人間性であることが分かった。だからあの時の店長がレアだったんだろう。
だから尚更そのギャップが凄く胸に来る。堪らないと当時のことを思い返しながら私は小刻みに顔を揺らした。


「まぁ、好きになる理由は何となく分かったかも……確かにそんなことされたら惚れるかな」

「はい、って花宮さん! 店長の格好いいところ知って好きになっちゃ駄目ですよ!」


すると彼女は「絶対ないから」となかなかにいい笑顔で即答した。本当にその気はないらしい。
もし花宮さんのような美人で大人の女性がライバルになったら私に勝ち目なんてなくなってしまう。