「二人とももういいよ。俺も鏡で見たときにこれ最悪だなって自分でも思ったからさ」


はぁ死にたい、と私たちに背を向ける店長がこの世の終わりかのように声を漏らすと「で、でも!」としーちゃんが必死にフォローしようと珍しく声を上げた。


「そ、そこまで変じゃないと思います……それに、店長さんは瑞希ちゃんの為に着たから……瑞希ちゃんが喜んでいたらそれでいいかと……」

「宇佐美さん……」

「……って、私一番関係ないですよねすみませんすみません悲しんでる店長さんに励ましの言葉を掛けられないようなこんな役立たずやっぱりこの店にいるわけにもいかないのでさっさとクビになって太平洋に埋められた方がマシですよねすみません」

「宇佐美さん!?」


宇佐美さんが病みだした!、と慌てる店長さんに駆け寄ると私はその体に勢いよく抱き着いた。
突然のことで後ろへとバランスを崩した彼は私の体を受け止めると何とか体の起点を持ち直し、「お、小野さん?」と困った表情で私の顔を覗き込む。

店長、絶対こんな服着るの嫌なはずなのに私のために着てくれたんだ。
似合っていても似合っていなくても、中身が店長だったら私は何でもいいんだと思う。

そこに店長がいたら、私はそれだけで幸せなんだ。


「私の夢叶えてくれてありがとうございます! 店長、だいだいだいだーい好きです!!」

「っ……」


ぎゅーっとその細い腰回りに抱き着くと「こらこら」と肩を押された。だけどその力は思っていたよりも弱かった。
その触られた感触から色々な感情が入り混じった店長の複雑な気持ちが伝わってきた。

やっぱり私の目に狂いはなかった。彼を好きになってよかった。