「瑞希ちゃん、大丈夫?」
「うん、でも店長には少し痛い目にあってもらおうかなって」
「痛い目?」
すると男子更衣室の中からガサゴソと激しい物音と共に焦った店長の声が聞こえてきた。
その音に驚いたしーちゃんは咄嗟に私の後ろへと隠れた。
「ちょ、高野くん!? いきなり何を!」
「店長すみません、小野さんのことは怒らないであげてくださいね」
そう言って更衣室から先に出てきたのは蒼先輩の方だった。バイトの制服に身を包んだ彼は休憩室のテーブルの上にドサドサとしわくちゃになった白いYシャツを置く。
「下は着替えていたので無理でしたがロッカーにあったシャツは全部持ってきました」
「いやぁ、よくこんなに溜め込めますね。店長の家には洗濯機とかアイロンとかないんでしょうか。私が持って帰って洗濯してあげようかな」
「そんなことよりあそこで絶望してる人をどうにかした方がいい」
桐谷先輩が指差すのは男子更衣室の扉。そこからは店長の負のオーラが漏れ出ているのが分かった。
私はそっと近付くとドアの前で項垂れているであろう彼に声を掛ける。
「店長」
「……お、小野さん」
私を怒らせた罪は重い。
「私が何を言いたいのか分かりますか?」