「一緒に制服デートしてくれませんか?」

「……」


彼は私の言葉に「制服?」と困ったように首を傾げた。


「ごめん、俺最近の高校生の言葉とはよく分からなくて……そもそも制服デートって何かな?」

「学校の制服を着て男女が何処かにお出掛けする行為のことを指します」

「その言葉の意味をそのまま解釈するととんでもない考えに行き着くんだけど……」


困惑した表情のまま固まっている店長に私は「はい!」と大きな声で返事をする。


「店長に高校の制服を着て欲しいんです!」

「やだ」


即答でそう言うと彼はやれやれと纏めた資料を机の棚に並べて事務室を出ようとする。
怠そうに腕を回すその背中を私は追い掛けた。


「どうして駄目なんですか!? 制服を着るだけですよ!」

「いや、それ小野さんが思ってるよりハードル高いことだからね? 俺三十路だよ?」

「似合うかどうかは着てみないと分からないじゃないですか!」


私の言葉に聞く耳も持っていないのか、店長は後ろから追い掛けてくる私に見向きもせずに何処かへと向かっている。
まぁ、店長に断られるのは目に見えていたことだ。ここからどうやって着てくれる方向へと説得していかが問題なのだ。


「どうしても、駄目ですか?」

「駄目です。そりゃあ俺だって小野さんのお願い叶えてあげたいけど」