じゃあまた明日ねー、と鞄を持って去って行く二人を見送ると私はしーちゃんの体をぎゅっと強く抱きしめた。


「しーちゃんやったね! ちゃんと自分から名前言えたね!」

「う、うん。女の子だし、まだ平気だったかも。でもその言い方は子供みたいだよぉ〜」

「ごめんごめん。それでもかなりの成長じゃない? バイトのお陰かも!」


そう言うと彼女の表情が明るくなる。うん、前よりも表情が豊かになっているし、バイトでの成果が出ていると思う。


「うん、この調子でもっと接客が上手くいくといいな」

「しーちゃんだったら出来るよ!」


何よりもこんな風にしーちゃんが前向きな気持ちを持ってくれたのが嬉しいんだ。本当に彼女をバイトに誘ってよかった!
私たちはそのテンションのまま手を繋いで学校を後にした。


学校からバイト先までの道をしーちゃんと歩いていると「そう言えば」とあることを思い出した。


「しーちゃんって夏休みのシフト出した? 学校がないから普段よりも沢山仕事入れられちゃうけど」

「うん、でも私部活とかしてないから沢山入れられても大丈夫だよ」


彼女が私のことを見上げながらマスクをモゴモゴさせて答える。
私も同じで部活をしていないから夏休みはほぼ毎日バイトへ行くつもりだ。折角の高校初の夏休みをバイトに割いてしまうのは華の女子高生としてどうかと思うけれど、だけどそうすれば長い時間一杯店長と一緒にいられるのだ。


「あ、そうだ! 夏休みに休みが一緒の日あったら何処かお出かけしない? 私しーちゃんと遊びたかったんだー!」

「わ、私は大丈夫だけど」


更に思い付いて「あ!」と声を上げる。