「(あれ、そういえば店長って十一年前に高校を卒業したんだよね?)」


十一年前かぁ。そう考えると急に店長の制服姿が思い浮かばなくなってきた。


「やっぱりクラスの男子に頼んでみたら?」

「それか彩葉が男装してみるとか!」


いや、そっちの方がないでしょ。ちょっと面白そうだけどね。
私たちは適当に砂を集めて花壇に返すと教室へ戻る。するとその入り口で一人腰が引けている少女が一人いた。


「瑞希、くよくよしてる場合じゃないよ。あの子アンタの友達でしょ」

「えー?」


光里に無理矢理前を向かされるとそこにいたのはおずおずと教室の様子を伺うしーちゃんだった。
そうだ、今日は放課後に掃除があること言うの忘れていた。教室まで迎えに行けなかったから心配して来たのかな?


「しーちゃーん」


私が慌てて駆け寄るとその声に吃驚して彼女がこちらを向く。
マスク越しでもその表情が安堵に満ちているのが直ぐに分かった。