私が好きなのは店長だけど、でも一つだけ絶対に譲れない夢がある。
私の周りの人は普通にしていて、店長に恋をしていたら絶対叶わない夢。


「制服デートが羨ましいんだよぉおお!」


そう言って彩葉の胸に顔を埋めると私とは違う流石の包容力で抱き締めてくれた。


「そんなこと言うなら普通に学校で彼氏作ったらいいのに。そしたら速攻その夢叶うよ?」


私たちのことを眺めながら光里が適当にコンクリートの上を箒で履いていた。
夏休みも一か月後に迫った六月の後半は既に夏を先取りしたような暑さで、日が照ってる中校門前の掃除をしている私たちは白いセーラー服で日を発射しつつも薄く汗を掻く。

私は「違うんだよ」とポツリと呟いた。私が好きなのは店長だけ。だから店長以外の人とデートなんて眼中にもない。
だけど制服デートはもう高校生の内にしか出来ない大事なイベントで、このままだと一生経験しないことになってしまう。

中学生の頃から憧れていた、放課後家に帰る途中にカップルで少し寄り道をする。
まさか店長みたいな歳上の人に恋をするなんて思ってもいなかったから吃驚しているけれど、だけど後悔はない。

それでも制服デートの夢は捨てられない!


「まぁクラスでも付き合い始めてる人多いよね。まだ高校入って二か月なのに」

「私たちもいつかは……とか思っているけど実際どうなのかな」


二人の言葉に顔を上げるとキッと睨み付けた。


「二人はいいよ! お洒落だし可愛いし! きっと直ぐに告白されて彼氏なんか作っちゃうよ。それで私のことは捨てるんでしょ」


私だけ仲間外れにするつもりなんだ、とプリプリしていると光里が「何なのこの面倒臭い子」と私のことを指差し、彩葉と見つめ合う。