「本当はファミレスの店長やってて……」

「ふぁ、みれす?」

「そう! 『JOY STREET』ってところなんだけど…」


彼は持っていた鞄の中からチラシを取り出し私に手渡した。
そこには大きく『JOY STREET』と書かれたファミリーレストランの写真が掲載されていた。

『JOY STREET』、略してジョイスト。
学生や家族に人気の全国チェーンの有名ファミリーレストラン。CMもテレビでやってるし、私も友達とよく学校近くのお店に放課後に寄ることがある。

サラリーマンでもなくて、ファミレスの店長さんだったんだ。


「で、見てほしいのがここなんだけど」


そう言って彼は私が持っているジョイストのチラシの裏側にある採用コーナーを指差した。
そこには大きく『学生バイト大募集』の文字が書かれてある。


「良かったら高校生でも大丈夫だしバイトしませんか?」


そう私の態度を窺うように言葉を紡いだ彼に一瞬思考の回転が追いつかなくなった。

バイトって、アルバイトのこと? どうして店長自らそんなことを……


「あ、部活してるんだったら調整してお休みの日とかに入ってもらえるだけでも助かるし! 今従業員減ってて、君が来てくれたら嬉しいなって思うんだけど……」


お願いします!、と潔く私に向かって頭を下げる彼。助けてもらった手前、なんだか断るのは心苦しいものがある。
もしかして私を不良から助けたのはバイト勧誘をするため? それを理解した瞬間、一瞬でときめいた心が粉々に砕け散っていく。