そうだ、あの時私は初めて一歩を踏み出せたんだ。
それをここで台無しにするなんて、自分を否定しているのと一緒だ。

あの一歩からだったら、きっと次の一歩はもっと簡単に出せるはず。


「無理はしないで、出来ることからやっていこう?周りの人も頼っていいからね」

「……瑞希ちゃんとか」

「小野さんもだけど、花宮さんとか桐谷くんとか」


俺よりも頼りになる人沢山いるんだ、と彼は肩を落としながら呟く。
そう言えばアルバイトの人、私が人見知りってことみんな知っててくれていた。

それってもしかして私のことを助けようとしてくれていたから?
だから慣れさせようとしてくれたり、察して距離を置いてくれたり……

こんな私の為に……
そんな人たちの気遣いを無駄になんて出来ない。


「頑張って、このお店に貢献できるように……なります」

「……うん、待ってるよ」


ニコニコと表情を緩める店長さんに顔が赤くなる。
こうして私のコンプレックスと真正面から付き合ってくれる大人の人って、親を除いたら店長さんくらいかもしれない。

こんな私を雇ってくれた彼のためにも努力をしなきゃいけないな。