ボフンと破裂した思考と共に私の動きは止まる。
暫くすると様子を見に来た瑞希ちゃんが姿を現した。


「しーちゃん、掃除終わったー……て、あれ?固まってる?」

「小野さん」

「あ、蒼先輩。ついでに紅先輩も」

「ついでだとぉ〜!? つーか蒼思いっきり殴ったな!?」

「つい手が出たんだよ」

「それにしてもどうしたんですか、しーちゃんは?」

「それが蒼がよ……」


コイツの声が可愛いって褒めやがってよ、と紅先輩が状況を説明すると瑞希ちゃんは「え!?」と顔を真っ青にして驚いた。


「蒼先輩、しーちゃんのこと可愛いなんて言ったんですか!?」

「え、声を褒めたんですけど」

「気を付けてください。蒼先輩の容姿で安易に可愛いなんて言ったらイケメンに全く耐性が付けられてない女子だと軽く失神するんで。お陰でしーちゃんはこんな状態ですよ。しーちゃん帰ってきて〜!」

「小野さん、何言ってるのか全然分からないです」


どうやら蒼先輩は自分自身のことをあまり自覚していないようだ。
瑞希ちゃんに肩を揺すられて我に返った私は再び彼の顔を見て顔を赤らめた。


「わ、私はこれで!」

「え!?宇佐美さん!?」


や、やっぱり男の人って苦手だ。特に格好いい人。
私は逃げ出すようにその場から駆け足で離れていく。

このお店の人に慣れ親しむ前に私は心臓が止まってしまうかもしれない。
そうなると役立たずになって店長さんからも容赦なくクビを宣告されてしまうだろう。


ズーンと頭を下げていると私の後ろに人の気配を感じた。


「宇佐美さん?」

「ひゃ!」

「うわぁ!」