先程の出来事を思い出しては目の前の現実と比べて、様々な憶測が頭を過る。
そんな私に向かって彼は少し腰を曲げて顔を近付けた。


「えーと、君って高校生かな?」

「え、」


脈略のない質問に戸惑いながらも「一応……」と返事する。
すると彼はまた「よかった!」と嬉しそうに声を上げた。

何だろう、この人教師だよね。私何も悪いことしていないよね。
私の頭が疑問で埋め尽くされているとそこへ追い打ちを掛けるように彼の言葉が襲い掛かる。


「実は俺、別に高校教師でもなんでもないんだ」

「はぁ!?」


すらーっと言われた爆弾発言に私は驚き、思わず声を上げると彼も吃驚したのか目を大きく見開いた。
演技って、まさかそこから全部嘘だったの!?


「はぁー、怖かった。不良の学生と話すなんて、本当は心臓がずっとバクバクしてて」

「……あの」

「ん?」

「では結局、貴方は一体?」


見た目完璧な彼の服装は白のYシャツに黒のスラックス。よく見れば教師というよりはサラリーマンぽい。ていうかサラリーマンだ。
あの不良学生たちを追い払うために、怖かったのに教師だって嘘を吐いてまで私のことを助けてくれたんだ。

彼が一体何者なのか、それを知る前に私は彼にそっと惹かれていった。