「宇佐美さん、来店したお客さんお願い」

「え」


パートさんの言葉に固まっていると「はいはい!」と後ろから声が聞こえてきた。


「私が行きます!」

「じゃあ瑞希ちゃんお願い」

「はい!」


私が申し訳なく思っていると瑞希ちゃんが背中を叩く。


「気にしないで! それより窓側の席の片付け代わってくれない?」

「う、うん……」


ありがとう、と言えば瑞希ちゃんは私に笑顔を向けて店の入り口へと走って行った。
私もあそこまでの余裕と気を遣うことができたらなぁ。

自分のことを惨めに思いながら指示通りにテーブルの上を片付ける。私、片付けばっかりしてるけどちゃんとお店の役に立ててるのかな。
食器を厨房へと運んで溜息を吐く。今度こそは、今度こそはと思いながらも私は未だに一歩を踏み出せずにいる。


「ねぇ」


誰も私には勇気を与えてくれなんかしない。


「……そこ、ちっちゃいの」

「はひっ」