そうだ、瑞希ちゃんと約束したんだ。このコンプレックスを克服するまで絶対に諦めないって。
私は息を深くまで吸うと心を落ち着かせるようにして口を開いた。


「あ、の……」


更衣室に私の声が響くと二人の視線が突き刺さる。
しかしそれにも負けないようにして絞るようにして声を出す。


「が、頑張ります、ので……宜しくお願いしま、す……」


途切れ途切れのその言葉に花宮さんの表情が固まるのが見えた。あぁ、絶対変な声だって思われたに違いない。
どうしよう、変な空気になっちゃった。もうこのまま穴を掘って埋まった方が絶対マシだよ。

自分がしたことに後悔して顔を赤らめていると暫くして花宮さんがポツリと言葉を漏らす。


「……可愛い」

「へ?」

「かっわい!」


気が付けば花宮さんは目の前にいた瑞希ちゃんのことを退かして私の手を握っていた。


「こう見えて私可愛いものに目が無いんだよね! 今の声宇佐美の!?」

「は、はひ……」

「可愛いー! 瞳さんって呼んでみて?」

「え?えっと……瞳、しゃん」


あ、噛んだ。もう恥ずかしくて地に埋まるところか海に帰りたくなった。
それなのに花宮さんは目を輝かしたまま私のことを見つめる。