「あの……」


静かな空間に響いたのはしーちゃんの声だった。


「店長さんの言うこと、尤もだと思います」


話すのが苦手いう彼女が必死に話していた。


「私、は……声が変で、人前だと緊張しちゃうし、失敗ばかりします。でもこのままじゃ駄目だってことも分かってるし、だからって直ぐには変われないって」


思ってるんですけど。


「ここで、働きたい……です」


しーちゃんはそう言うとポケットからメモ帳を取り出して、何をするかと思ったらそれをビリビリと破り始めた。
私と店長が宙を舞うその紙切れに目を奪われていると彼女は言葉を続けた。


「今までは紙に頼って生きてきました。でも、ちゃんと自分の声で伝えたい。本当はもっと、人と話してみたい」


今日初めて会った時、彼女はメモ帳を大事に握っていた。そんな人見知りだった彼女がマスクを外して、自分の声で喋って、気持ちを人へ伝えようとしている。
一日でここまで変われたんだから、きっと彼女がコンプレックスを克服する日も遠くはないだろうと私は思った。


「生まれ変わりたいです。お金は要りません。そのきっかけを私にください」


しーちゃんはそう言うと店長に向かって頭を下げた。
その後ろで泣きそうになってしまった。なんて純粋なんだろう。自分の欠点に目の前から立ち向かっているしーちゃんはか弱い女の子じゃなかった。

この子は強い。