私の言葉に「小野さん……」と声を漏らすがしーちゃんの為に何も言わない店長は優しさの塊だと思った。


「むしろ店長を練習台だと思ってそれ克服しようよ!」

「練習台……」

「小野さん、俺のこともしかして嫌い?」


私もいるからさ!、と言ってしーちゃんのことを店長の前に座らせる。
店長はあまり怖がらせないようにわざとへらへらと馬鹿みたいに笑っていて、そんな彼の前でしーちゃんはじっくりと店長のことを観察していた。

思ったより大丈夫そうだ。そう思った瞬間に、しーちゃんが自分の口元を手で覆った。


「駄目、緊張しすぎて吐きそう」

「しーちゃん!?」


飲食店でその発言はまずいよ!
私は最悪の事態にならないように必死に彼女の背中を摩りまくった。

彼女の容態がマシになってきたところで店長は再び話を元に戻した。


「取り敢えずバイトはしたいんだよね?」

「……」

「でもなぁ、俺の目から見ると宇佐美さんは接客業には向いてないかも」

「そんなっ、厨房とかはどうですか?」

「残念ながら厨房のバイトはもう空きがなくて。特にレストランの接客なんて一日に何十人の人と接する訳だから凄く辛いと思う。宇佐美さんはそれでもこの仕事がやりたいって思う?」


店長にしては厳しめの言葉に私はむっと顔をしかめた。
しーちゃんはこのことを克服したいからここに来たんじゃないか。その気持ちを踏み躙られている気がした。