「(すごー……)」


状況についていけず、ぼーっとその場に突っ立っていた私は我に返ると助けてくれた男性に向かって頭を下げた。


「ありがとうございます! 助かりました!」


良かった、まさかこんなタイミングよく高校の先生が通り掛かってくれるなんて……

すると、


「大丈夫だったかな?」

「っ……」


私は「え」と声を漏らし頭を上げた。あれ、今の声ってこの人のものだよね? なんかさっき不良たちと話していた声と全然違う気が……
改めて彼を視界に入れるとさっきの威勢のあるオーラはどこへやら、背景にピンクの花が待っているような柔らかい雰囲気の顔の整った男性が立っていた。

まるで王子様みたいだ。


「怪我無い?」

「……」

「……?」


歳はどれくらいだろう、凄く上ってわけじゃないみたいだけど、顔格好いいし、優しそうな人だ。
彼に見惚れて反応が遅れた私に、男性は困「あの?」と困ったように声を掛ける。

その声で再び我に返った。


「あ、はい! 怪我は、ないです。お陰さまで」

「そっか、よかった」


彼は安心したようにくしゃっと顔を崩して笑った。か、可愛い。
ていうかこの人、本当にさっきまで不良たちに向かって凄んでいた男性と同一人物なのだろうか。全く雰囲気が違うけれど、もしかしてあれは私を助けるための演技?