「対人恐怖症か」


店長はしーちゃんの履歴書を眺めながら言った。
そんな彼女は私の後ろに隠れ、店長の様子を窺っているようだ。


「昔声のことで笑われたことがトラウマになって、そのせいで人前で話すことが苦手になったそうです」

「それにしては小野さんには懐いてるね」

「まだ子供とか同じ年の女の子とかマシみたいで」


対人恐怖症とは人と話すときに強度な緊張感に襲われて話せなくなったり周りの視線が気になったり顔が赤面してしまう病気。
その為しーちゃんはいつもマスクをして赤面しているのを隠したり周りからの視線を感じないようにしているらしい。

店長は「男性が一番苦手なんだね」と、


「店長のこと体が大きくて凄く怖いって言ってました」

「え、嘘。俺もか」

「世界で一番無害そうな顔してるんですけどね」

「そ、それ悪口？」

「まさか」


褒めてるんですよ、と言えば店長は納得がいってないようで「そ、そう？」と首を傾げた。
しーちゃんは男性恐怖症ではないらしいがクラスの男子に声のことで虐められたのがまだ記憶に残っているらしく、それを気にしてしまうみたいだ。

私は彼女の方を振り返るとその肩に手を置いた。


「大丈夫！店長全然怖くないよ！ 本当！ 舐めてていいから！」