「ご、ごめんね！ でも何で！？ 変じゃないよ！」

「……昔からこの声のせいで虐められてて……アニメみたいだって」

「アニメ？ 私あんまり見ないから分かんないけど。でもすっごく可愛いよ！」

「……」


宇佐美さんはそんな私に「ほ、本当ですか？」と恥ずかしがる。その声も凄く可愛らしくて、聞いている私の耳が解けそうになるくらいだった。
何だ、変な声とか言ったからしゃがれてるとか男みたいな声だと思っていたけど、普通に可愛らしい女の子っぽい声じゃないか。というか女の子を超越した声だ。


「あの、私……」


私が変だと言わなかったからか、宇佐美さんは安心したように話し出す。それでもかなり迷いがあるように思えた。


「ずっと恥ずかしくてこの声隠してたんです。だけど最近このままじゃ駄目だって思って……それでたまたまこのポスターを見たから」

「うん」

「知ってる人の前だと緊張して話せないけど、知らない人だと大丈夫かもしれないから」


それってつまりこのコンプレックスを克服しようとしてるってことだよね。
私が「凄いよ！」と言うと彼女はこれまた驚いたように目を丸くしていた。


「そうやって頑張ろうってしてるの凄い！ 応援する！ 一緒に働こう！」

「っ……でも、私凄く人見知りで……アルバイトも初めてだし接客も出来るかどうか」

「大丈夫！ 私も初めてだったし職場の人もみんな優しいから。きっと直ぐに慣れるよ」

「……」


ね？、と後押しするように宇佐美さんの手を掴んで握る。すると小さく冷たいその手が弱い力で私の手を握り返してくれた。


「私、このポスターの人見知りでも大丈夫っていうのを見て勇気が出たんです」

「え、」

「良かったです、小野さんが優しい人で」


そう微笑んだ宇佐美さんに私は「勿論だよ！」と勢いそのままに告げる。
そうか、その文字を見て声を掛けてくれたんだ。じゃあ私が作ったポスターはある意味役に立ったのね。

周りからそこの部分だけは大批判を食らっていたけど。結果オーライということで。